親父を睨んでいると、隣から視線を感じた。


横を向くと、女とバッチリ目が合った。


俺の顔を見た瞬間、女は目を見開く。まるで次元が違うものを見るように。


…少し傷つくんだけど。

なんて思ってると、親父が口を開いた。



「翔、お前は今日で23歳だ。家のしきたりでは今年中に子どもを産まなければならない。お前もそのこと知っているだろう?」

もちろん、しきたりの事くらい嫌って程知っている。

だが、今の時代、しきたりとか守って利益があるわけじゃない。


「…しきたりなんて守ってどうなる」

真顔で言うと、親父も真顔で


「お前の母さんも22歳でお前を産んだ。母さんの母さんもだ。しきたりでは24歳になるまでに子どもを産み、子どもに英才教育を受けさせることになっている」

と言い放った。