「一般の方は、多分ほとんどが知らないと思いますよ?」

軍人さんは、笑いながら言った。

「もしかして…国王直属部隊とか、そういう感じのですか?」

「そうですそうです!正解です。」

当てずっぽで言ってみたら、当たった。


軍人さんは丁寧に教えてくれた。


その国王直属部隊は、
『群青の剣』
だということ。

少数精鋭で、軍の名家や士官学校を首席で卒業したなど、
エリートしか入隊出来ないこと。

普通の軍人と違い、街の治安、国民の安全を守ることなどは管轄ではないということ。



あたしは城から真っ直ぐ家に帰った。


もう夕方で、綺麗な夕焼けが辺りを照らした。


「ただいま~」

…返事が無い。

大体いつも父さんか母さんは家に居るのに…。

あたしは少し気になったので、薬剤庫に行ってみた。

家に居ない時は大体薬剤庫にいる。


…でも、居なかった。

「もう…二人して出掛けたの?店開けたままじゃん。」


―ピンポーン

インターホンが鳴ったので、玄関へ向かった。


ドアを開けると、男性が立っていた。

黒くて、肩まである少し長めの髪。
穏やかそうな、でも少し幼い顔立ち。
そして、群青色の軍服。

「…群青の剣…っ?」

「あ、ご存知でしたか?初めまして。リー・シェンロンと申します。」

リーは深々と礼をした。

「…何の用ですか。」

あたしは少し怖かった。
だって、ほとんど国民の前に現れない人がいるんだから。


すると、リーは少し間を開けて口を開いた。

「ベルさん。落ち着いて聞いて下さい。」

「…え?」

「あなたのご両親が誘拐されました。」