30分程経った頃、殿下が目を覚ました。

殿下は、あたしの汗だくになっている体を見て、手を伸ばしてきた。

「ベル…汗が…」

「あっ!すみません!大丈夫ですから。」

あたしはカバンからハンカチを取りだして汗をふいた。

「それでは、私はこれで。シルエ殿下、お大事になさってくださいね。」

そう言って椅子から立ち上がると、殿下に服の袖をつかまれた。

「わっ…で、殿下??」

「ベル」

いつもと違って、力強く呼ばれた。

「また、来てくれ…。」

黒く真っ直ぐな瞳に見つめられ、一瞬動けなくなる。

それくらい殿下の瞳は美しい。

「…はい。もちろんです。」