帝都軍事研究所は、サンマリア城のすぐ隣にあった。

ものすごく大きい建物で、中は近代的な装置でいっぱいだった。

眺めていると、隣にいた人が呟いた。

「…あの時と、何も変わらない…。」

隣を見ると、女性だった。あたしより少し年上に見えた。

その女性は、あたしと目が合い、微笑んでくれた。

「あ、ごめんね。君も能力者なの?」

「はい!そうです。えっと…」

「ああ、あたしはツバキ。」

「ベルです。よろしくお願いします。」

優しそうな人だった。
でも、どこか影のある人だった。

「ベルちゃんの能力って何?私は錬金っていう能力なの。」

錬金…
初めて聞いた。
と言うより、あたしは自分の能力しか知らなかった。

「あたしは夢幻です。」

夢幻、と言った途端、ツバキさんの顔色が変わった。

「夢幻…!?そっか、ベルちゃんも…。」

え、何?
あたしも、何なの…?

「ツバキさ…『1人ずつ部屋に入ってくださーい!!!』

あたしの言葉を遮って、研究員の人が叫んだ。

「じゃあ、またねベルちゃん。」

ツバキさんは手を振って行ってしまった。

「さあ、あなたも入って。」

「あ、すいません。」

背中を押され、あたしは部屋に入った。


一人一人個室が用意されていたようで、その部屋にはあたし以外の能力者は入ってこなかった。