あたしはベッドに身を投げた。
仰向けになって、ずっと天井を見つめた。

頭の中は真っ白。
あたしはこれからどうなるんだろう。
この国はどうなるんだろう。

そんなことを考える余裕はなかった。

「…そういえば、殿下…。」

ふっ、と殿下のことがあたしの頭をよぎる。

あたしが殿下の主治医になってから初めて、会話らしい会話をした。
初めて殿下が立っているのを見た。

…はずなんだけど。

「なんか懐かしかったなあ。なんでだろ。」

そんなことを思っている内に、気付けば眠っていた。


目覚めたのは、ドアをノックする音。

「はぁい。」

半分寝ぼけて、返事した。

鍵はかけないで寝ちゃったから、あたしがドアまで行かなくてもドアが開いた。

「あ、ごめん。寝てた?」

キースだった。
手には食事。

「わあ!夜ご飯!」

がばっ、とベッドから飛び降りた。

「お前ずっと寝てたの?夕焼け見なかったわけ?」

「え?まあ、うん。でもここからの夕焼けなら一回見たことあるよ。すんごい綺麗だった。」

もぐもぐとご飯を食べながら、あたしは喋った。

そんな様子をキースはじーっと見ている。

「サンマリアの丘からの夕焼け、見たことあるか?」