「だけど、ベル。私は病気になって良かったと思っている。そうじゃなきゃ私は…」

殿下の声を遮るように
いきなり部屋のドアが開いた。

部屋の外で、見張りの軍人さんか慌てている。


「キース…!?」

キースがそこに居た。
殿下を嫌っているキースが
どうして?


「キース・ロイエンベルガーか…私を殺しにでもやってきたのか?」

殿下は少し笑っていた。
でもあたしはそんな余裕はない。

「キース!まさか、違うわよね?」

「ちげぇよ。俺はベルに用事があって来たんだ。」

なんだかいつものキースと違った。
雰囲気が怖かった。

「陛下がお呼びだ。能力者全員サンマリア城に集めろってな。」

なんですって?
能力者 全員 ?

「どうして?あたし、何も悪いこと…」

はっと、気が付いた。
あたし、人を殺した。
自分の身を守るためとはいえ…

「お前は悪くねえよ。仕方がないんだ、これは。…行くぞ。」

あたしはキースに腕を引かれた。

「あっ、ちょっと!殿下が…」

あたしは殿下の方を振り返った。

さっきと変わらない表情。
柔らかな。

「また、会おう。ベル。」


殿下はそれだけ言うと、ベッドへと移動した。


あたしもそれと同時に部屋から出された。