少し遅れて、ｷｰｽが謁見の間に来た。

「申し訳ありません。」

明らかに棒読みの謝罪をした。

「…皆、集まったね。早速だが…ｴﾘｻﾞﾍﾞｽ。」

「はい。」

ｴﾘｻﾞﾍﾞｽは前に出た。

謁見の間の空気ははりつめている。
群青の剣の兵士達も、その異様な雰囲気にのまれ、微動だにしない。

「あれだけ言ったのに、なぜﾍﾞﾙを任務に連れて行った？」

ｻﾝﾄﾞﾗは静かに喋った。

「任務成功のためには、ﾙｸﾃﾝ研究所にある生物兵器が必要になりまして、それを借りるためには研究所の信頼を得なければいけません。」

「それで、ﾍﾞﾙを？」

「はい。ﾙｸﾃﾝ研究所の責任者はﾍﾞﾙの姉のﾘﾘｰ･ｷｯﾄﾞﾏﾝです。」

ｴﾘｻﾞﾍﾞｽは淡々と話した。
まるで異様な雰囲気を感じていないようだった。


「…ﾍﾞﾙが殺めたのは、ﾊﾞﾚﾝｼｱ国人だ。それに対して抗議の手紙がﾊﾞﾚﾝｼｱ国から来ていてね…。非常にまずい。」

すると、ﾘｰが横から口を挟んだ。


「陛下。だとしたらﾊﾞﾚﾝｼｱ国人はﾚｼﾞｽﾀﾝｽに加担していた、ということでしょうか？」

ﾘｰは真剣に聞いたのだが、
ｻﾝﾄﾞﾗは鼻で笑った。

「ﾘｰ･ｼｪﾝﾛﾝ。何を言っているの？当たり前じゃないか。今も昔も、ﾊﾞﾚﾝｼｱはﾏﾘｱﾅを潰そうと必死だ。」

「――――っ!!」

ﾘｰは言葉が出なかった。
ｷｰｽも何か言いたげだったが、ｻﾝﾄﾞﾗにそれを阻止された。


「ﾏﾘｱﾅ帝国の盾として、私の右腕として、今から任務を言い渡す。」


兵士たちは姿勢を整えた。


「群青の剣は、一週間後までに全国各地に散らばる能力者達をｻﾝﾏﾘｱ城に集めること。１人残らず、ね。」


ｻﾝﾄﾞﾗは笑みを浮かべながら、そう言った。