城に着くと、私は裏門から城内に入った。
中に入ると、いつもの様に水色の軍服を着た軍人さんが立っていた。
「ベル・キッドマン様ですね。お待ちしておりました。殿下のお部屋に案内します。」
「はい、お願いします。」
私は軍人さんに連れられ、シルエ殿下の部屋へ向かった。
城内には、沢山の軍人さんや王族の人がいる。
だけど一般人は殆んどいない。
私が城に出入りしていることを多くの人に知られないように、いつも人通りの無い廊下を歩く。
「着きました。」
そう言われ、私は部屋の中に入った。
部屋の中には太陽の光が射しこんでいて、暖かい、と言うよりは少し暑かった。
私はベッドに寝ていたシルエ殿下に近づく。
殿下は男性だけど、綺麗な顔をしている。長い黒髪が特徴…だと思う。
「…殿下。ベルです。お体の調子は、いかがですか?」
返事は無い。
これもいつもの事。
シルエ殿下は心の病に伏せている。
詳しい事はよく分からないけれど。
「…ベル。」
小さい声で殿下が喋る。
「私は、しばらくサンマリアの丘の夕日を見ていないのだ。」
「夕日が見たいのですか?」
私は殿下の目の上に手をかざす。
「行きましょう?殿下の望みの場所に。」