「…さて。準備はいいかしら?ルクテンへ向かうわよ。」

ルクテンは、帝都サンマリアから北に位置する街。

あたしたちは軍用車に乗り込み出発した。

「ねえ、研究所ってさ…何の研究してるとこなの?」

あたしはリーに聞いてみた。
実際、研究所と言われても
中身は全然分からなかったから。

「医学の研究らしいけど…なんか、病原体の発見とか、色々?」

「なのに、兵器も扱ってるの?」

すると、キースが話に入ってきた。

「生物兵器だよ。普通の爆弾だとかは軍工場で作れっけど、生物兵器は科学者が居ないと作れねーからな。」

「へえ…え!でも…」

あたしはハッとした。
戦争はもう終わっているのに
兵器は必要なのか、と思った。

「平和なのに兵器はいらない、そう思うんでしょ?」

エリザベスさんは、あたしの心の中を見透かしているかのように口を開いた。

「…こういう事件もあるから、仕方ないのよ。私たちの生活に軍は必要。軍が必要なら、兵器だって必要。」

夢のないこと言ってごめんね、とエリザベスさんはあたしに言った。

ずっと平和だと思ってた。
あたしたち国民は都合の良いことしか知らされない。

平和条約のことだって、能力者のことだって、そうだ。

でも今はそんなこと考えたってキリが無い。

父さんと母さんを助けることに集中しなきゃ…!!