「…疲れたあ~。」

私はそう言うと、持っていたペンを机に置いた。

椅子から立ち上がり窓を開ける。

外は賑わっていた。
初夏らしい風が私の茶色の髪の毛をなびかせる。


「ベルーっ!仕事だよ!」
下からお母さんが叫ぶ。

「分かった今行く!」


私の家は薬屋を営んでいて、
毎日薬を求めて色々な人が来る。
うちは結構珍しい薬も扱っていて、サンマリアだけじゃなく、全国各地から薬の注文が相次ぐ。


私の仕事は、うちまで薬を買いに来れない人のために薬を届けること。

だったら宅急便でも使えば?って話だけど、
私は医者を目指しているから
医者修行のために、色々な患者さんに会いに行くの。


「今日は、お城に行って頂戴。いつもみたいに渡してくれればいいわ。」

私は薬を受け取った。

「分かったわ。行ってくる。」

今日の仕事は、お城に薬を届けること…

お城に薬を届けるのは、これが初めてではない。
王様の弟のシルエ殿下が病に伏せていて、その病を治す薬はうちでしか取り扱っていないため、毎回私がお城まで届けている。


私でなくてはいけないらしい。

殿下の病気は私でなきゃ、治せないらしい。


それは、私が能力者だから。