「階段を上ってたら、風を感じたの」
『風?』
「そう…」
とってもあたたかくて優しい風。
「懐かしい…って思って、振り返ったんだけど…けど誰もいなかった」
そう―――。
懐かしいって。
確かにそう感じた。
それはきっと、私の愛しい人がいたから。
ねぇ、鏡夜―――。
「…鏡夜。あれは鏡夜だったんでしょ?」
私の瞳を真っすぐに見つめ返していた鏡夜の瞳が弧を描く。
『―――皐月』
柔らかい声で私の名を呼び、鏡夜は笑った。
それ以上鏡夜は何も言わない。
ただ、いつもよりずっとずっと、優しく笑うだけ。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…