涙がポタっと落ちた




「…すみません、私…」



「泣く事はないのに、どうした?」




気持ちが痛いくらいわかってしまった



呼んでも応えてくれない人の名を呼ぶ





その人はもう私の名前を呼んでくれる事はないのに



「……っ、」



「紅々…、泣いてちゃ分からないよ。」




司さんは起き上がり 私を抱き寄せた



「…司さん…わ、わたし…」






あなたの寂しい気持ち…私わかります








そう言いたいのに涙しか流れてこない





「…大丈夫だよ。」





小さな妹を慰めるみたいに私の背中を撫でてくれた



確か彼には妹がいた
いまは海外に留学していないらしいけど…






彼もこうやって泣いていた妹さんを慰めていたのかな…




自分だってつらかったのに…






「……悪いと思ってる。わざわざ君に…蒼井家の内情を話してしまった事、君が背負うべき事ではないのに。背負うべきは俺だけでいいのに」




そんな事ない…

彼一人でも重すぎるくらいの荷物だ



「……私は、大丈夫です、司さん。なんか話してくださってちょっとだけ私を信頼してくれたのかな…なんて思ってて…」