「真柴」
思わずその姿に話しかける。
呼ばれた真柴は、びっくりした様子で俺の方を振り向いた。
一瞬の沈黙のあと、先に口を開いたのは真柴の方だった。
「あ、悲しい嘘つき人間だ。どうしたの?なんか用?」
心なしか、トゲのある言い回しだ。
「いや、たまたま通りかかったら見えたから、真柴の姿が」
なんだか動揺してるのか、下手な日本語で言った。
「あっそ。言っとくけど、居残りじゃないからね。日誌書いてるだけだから。あたし今日、日直だから」
聞いてもないのにそんなことを言い出す真柴はやっぱり、いつもよりツンケンしている気がする。