「松井くんは、悲しい人だね」

突然、俺の方を見上げ、それだけ言った真柴は、くるりと背を向けて自分の教室に戻って行った。



(……なんだそれ。)



席に戻った俺はまた、机にうっつぷす。

「おかえり、タケ。今日も真柴ちゃんから愛の告白?」



冷やかすように言った友達の言葉は、聞こえないふりをした。




悲しい?俺が?



その言葉が頭から離れない俺は、その日のホームルームが終わってしばらくして、真柴のクラスを覗いた。



教室には、女の子がひとりだけ。



それが誰だか、俺にはよく見なくてもわかった。