職場の入口に立っていたのは、弟だった。


「陸(リク)、どうしたの」

「唯、弁当忘れてた。母さんが、持ってけって」


高校生になった弟の陸は、これから、夏休み中の部活に行くのだろう。

まだまだ新しい、バスケ部のジャージに身を包み、片手にはあたしの忘れたお弁当を持っていた。

このジャージは、過去にあたしも、そして彼も。

着用し、部活に励んでいた、思い出のジャージ。



「……ありがとう」

受け取って、お礼を言う。


「……ボケッとしてんなよ」


「……ごめん」