「青木……いや、紗英」
はじめて呼ばれた、下の名前に、驚きと、恥ずかしさと、嬉しさで心臓が飛び出そう。
「高校生のとき、部活中に視線を感じていたんだ。
その視線が気になって、気になって、仕方なかった。
視線の先の彼女は、今日は来るかな、いい所見せたいなって思ってたんだ。
きっと。俺が俺の気持ちに気付く前に、唯が俺の気持ちに気付いたんだ。
本当、恋って難しいようで、実は簡単かもしれないね」
昔からなにも変わらない、さわやかな笑顔をあたしに向ける。
大人になったあたしも、やっぱり恋をする。
だけどこの恋は、終わらない恋であってほしい。
そう、思った。