「俺、あの時から、お前のこと…」

関根から受け取った紙を両手で持って口の辺りを隠しているみゆきが関根を見上げた。

「俺さ…あの時から坂下のこと、

好きだったんだ。

でも、坂下に俺は釣り合わないって思ってて…。
もう諦めようって思ったから神田と付き合ったんだけど…。」

神田昭子への怒り、
何も出来ずにいる自分への悔しさ、
そんなもので凝り固まっていたこころが
じんわりと温まっていくような感覚が起こった。

両手で持っていた借り物競争の紙で
再び流れる涙を隠そうと、顔全体を覆った。

うつむいて、紙で顔を隠しながらみゆきは声をふりしぼった。

「あたし…えっ…あたし…も…。
あ…あたしなんか…関…根に、似合わないと…思っ…。」

関根はみゆきの手から紙を優しく取り上げた。
かわりに、空になったみゆきの両手を、自分の右手で包んだ。

今日もきれいに巻かれたみゆきの茶髪の頭に関根の顎が乗った。

「かわいい。かわいい…。」
関根はそう言ってみゆきの頭を左手で撫でた。