自転車置き場の片隅のコンクリートにみゆきは腰掛けていた。

離れた場所にあるプールではもうすぐ掃除が始まる。

あたしも、ジャージに着替えなきゃ…。
もういいか…めんどくさ…。

頬杖を付きながら初夏の風を感じた。

校舎やグラウンドから聞こえる生徒のはしゃいだ声が夏の空に吸収されていくようで、みゆきはどことなく切なくなり、空を見上げた。

見上げると…ハラハラと何かが降ってくる。

薄紅色に見える、ちいさな…

「桜…?」

みゆきは手のひらを出してそれを受け取った。

「ちがう…。」
薄紅色に見えたちいさな桜の花びらのようなものは
茶封筒を細かくちぎった紙ふぶきだった。

「ここにいたんだ。」

突然の声にびっくりして上を見たまま視線を横にそらすと、
そこには非常階段の踊り場から身を乗り出して紙ふぶきをチラチラと落とす関根がいた。