みゆきが去った教室はざわつきが収まらなかった。

グループごとに
「なになに?」
「なんだ?」
と、今目の前で起こった事を確認し合っていた。

神田昭子には時折白い目も向けられた。

「おい。なんなんだよ。今の。」
話していた男子に問いかけられる関根に、クラスに群がる生徒をグングンと押しのけて利佳子が近付いた。

「関根、追いかけろ!!」
利佳子が関根を睨みながら言った。

関根はポケットに手を入れたまま利佳子を見おろす。

「追いかけろよ!!

みゆきのこと、ちょっとでも好きなら…。
嫌いじゃないんなら、追いかけろ!!」

痺れを切らしたかのように利佳子が関根に迫る。

「みゆきは…
お前のことが好きなんだよ!!

ずっと、ずっと好きだったんだよ!!」

ざわついた教室が一瞬で静かになった。
関根は浅く腰をかけていた机から
ガタっと立ち上がると一直線に走って教室から出て行った。

少しの沈黙のあと、
考えられない恋の発覚に、集まっていた野次馬は一斉に声をあげた。