「黒板に何書かれたって、あたしはいいけど…!

関根のこと悪く言うのは許さない!」

嗚咽の間からみゆきは声を出して神田昭子に言った。


みゆきの教室には、まるで甘いものに群がる蟻のように人が集まってきていた。
騒ぎを聞きつけた利佳子もそこにいた。

「利佳ちゃん。ちょっとみゆきちゃん止めてよ。」
誰かがそう言うと利佳子は鋭い視線を、みゆき達に投げかけたまま
「なんかあったんでしょ。あたしが止めることじゃないんじゃん。」
と言い放った。

ジャージのポケットを手でまさぐったまま関根はみゆきと神田昭子を見ていた。

「あんたに関根の何がわかるの!?」
力強い腕、優しい素顔…

「関根のことバカにしないで!
関根はあたしの…」
大好きな人なんだから…言いかけてみゆきは周囲の視線に気付いた。

涙に顔を濡らしたみゆきを神田昭子は間近で見つめ、その目に縛り付けられたように動くことができなかった。

何かをいいたげにみゆきを見る関根と目が合ったとたん、みゆきは教室から走り出した。