神田昭子と山下仁美の会話は続く。

「あ~。あれね。
だってあの子さ。授業遅れてきた時関根と目が合って、すっごい勢いで目逸らしてんだもん。なんか好きなのかな~って思って。
黒板に書いてやったんだ。」

あの落書き、神田昭子が書いたんだ!!

みゆきは顔が紅潮していくのを感じた。

「でも、それがきっかけで関根としゃべって、んで、付き合ったんでしょ。」

「そうだよ。
てか、きっかけにするために落書きしてやったの!」

「でも、結局別れちゃったんだ~。」

缶ジュースを持つ手がぶるぶると震えだす。
体育座りをしたまま、目の前を凝視してみゆきは必死で怒りをこらえていた。

しかし…

「暇つぶし以下だもん、関根って。

てかさ~。キスもないなんて、インポじゃね?」

ガシャーン!!
みゆきが握っていたジュースの缶をバルコニーの壁に投げつけた。

「え?」
人が居たことに、何よりも、みゆきがいたことに神田昭子と山下仁美は驚きを隠せなかった。

つかつかと教室の前方のバルコニー出入り口からみゆきは教室に入った。
一目散に神田昭子のもとへ近寄る。