「なんかあった?」
落ち着きを取り戻し、トイレに行って顔を直していたみゆきに対して、トイレの洗面台に座ったままの姿勢で利佳子は聞いた。

鏡越しに隣の利佳子に目をやってみゆきは教室で聞いたことを伝えた。

「関根がコクられてたわけ?」

「うん、そう。」

「んで?OKしたってこと?!!」
利佳子がみゆきをまくしたてる。

みゆきはうなずいた。
利佳子はヒステリーを起こした女のように、「キィーー」と口を動かした。

「みゆき…。
悪いこと言わないからさ。もう、関根のことはやめたほうがいいよ。
てか、もともとみゆきが関根なんて…もったいないじゃん!」

利佳子は精一杯の言葉でみゆきを慰めようとしていた。

「やっぱり…もう無理なのかなぁ…。

もともと、無理な相手だったのかな…。」

みゆきも力なく笑って利佳子に答えた。


帰り道はだいぶ薄暗くなっていた。
7月頭なのに、もう蒸し暑い。

来週からは期末試験が始まる。

花びらの影も形もなくなった緑色の桜を見上げて、みゆきは関根を諦める決心をした。