みゆきは走り出した。

関根の、神田昭子に対する返事を聞いたとき、内臓が全て下がるような感覚になった。
まるで、ジェットコースターで急降下するような。

ありえない!ありえない!ありえない!
関根が、誰かと付き合っちゃうなんて!!

猛スピードで廊下を駆けていく。

タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!

まるでインターハイにでも行ける様なスピードだった。

どうして?
体育祭のときに、ちょっとだけ距離が縮まったような気がした。
それがまた遠のいた。

関根はあたしだけの好きな人だった。
あたしの中で関根は触れてはいけないような、聖域にいる人だった。

それが、他の人間はいとも簡単に触ってしまうことが、羨ましかった。
何もできないでいる自分が悲しかった…。

上履きのかかとをきちんと入れていなかったみゆきはスピードに負けバランスを崩して、勢いよく転んだ。

「いた…。」
ジンジンと顔面を打って痛む鼻を押さえたら真っ赤な鮮血が出てきた。

「いたた…。痛い…。」
鼻からあふれる血をハンカチでおさえながらみゆきは階段を降りて利佳子のもとへとたどり着いた。