いけない…人のプライバシーだから…

そう思いながらも、みゆきは二人が話していることが気になってしかたなかった。

誰もいない教室に二人残っていた。

辺りを見回すと、廊下にも人の気配はない。
ただオレンジ色の夕日に照らされた教室からもれる陽光が廊下に色をつけていた。

出口でみゆきは聞き耳をたてた。

ドキンドキンドキン
きっとあたし、今人生で最大級に耳が大きくなってる…

ドキンドキン

「だから、坂下さんとなんかあるの?」

神田昭子の声だ。
みゆきには出せない、男に甘えるような優しい声。

「いや…なんも」
ぼそりと関根が答える。

「じゃ、なんであんなこと黒板に書かれたわけ~?

あ!!もしかして借り物競争の時のこと、印象強かったからかな?」

「そうなんじゃねーの。」

「じゃさ、坂下さんのことなんとも思ってないの?」

ドキンドキンドキン

「…別に…」

「じゃあさ…関根くん…あたしと付き合ってよ…。

あたし、好きになってもらう自信あるよ…。」

ドキンドキンドキン

「別に…いいけど。」