黒板を見る関根。
「なんだ…これ?」
そう言って関根はみゆきを見た。

みゆきは今度こそ視線をそらした。

「俺は別にかまわないけどさ、どんなこと言われても…。
けど、坂下は女なんだぜ…。」
関根は言いながら黒板に向かって消し始めた。

誰も消そうとしなかったその中傷的ならくがきを。

遠藤が利佳子とみゆきのとなりから小走りに黒板のもとへと走って、関根と一緒になって消した。

利佳子が心配そうにみゆきの背中をぽんぽんとたたく。

遠藤と利佳子、誰よりも関根の優しさがみゆきの心に染みた…。

しかしそれ以上に、誰か自分の知らない人間が、この想いに気づいているかもしれないことに怖くなった…。


邪魔される?

別に付き合いたいとか、キスしたいとか…そんなことまで望んでいるわけじゃない。

ただ、
絶対不可侵の王子様に想いを寄せているだけ…。

拒絶されるくらいなら、告白なんてするつもりもなかった。
今までみたいな感じで…。

目が合えば、それだけで1日元気になって。
話かけられれば、それだけで1週間過ごせた。

「根拠の無いことだから。坂下、気にするなよ。」
関根は黒板を消し終わるとみゆきを振り返り言った。

「わかってる!」
『根拠のない』という関根の言葉にショックを受けつつも、みゆきは元気を装ってそう答えた。

群がって面白がっていたクラスメート達も徐々に散っていった。