利佳子がみゆきにポカリを持ってきた時にはすでにリレーは3人目にバトンが渡っていた。

「お、これ最後の種目じゃん。」
利佳子が足元に座っているみゆきにポカリを差し出しながらトラックを振り返った。

男子のリレーなんて、みんな速いからすぐにバトンがつながる。

ポカリのキャップを開けた時は関根が走り始めていた。

ドキンドキンドキン

抜かせ…関根!!

2位にいる関根を精一杯心の中で応援した。

「あ…あ…抜かす?抜かすんじゃない?」
利佳子が興奮しながら足元のみゆきを見て言った。

ドキンドキンドキン

抜かせ抜かせ!!頑張れ!!関根!!

みゆきは立ち上がった。
まっすぐトラックを見つめた。

口に出して応援したいのを、利佳子の手前、ぐっとこらえながら。

「抜かした!!すげ~。」
利佳子が言う。

みゆきはポカリのボトルがつぶれるほど力を入れて握り締めていた。

そのまま1位でゴールした関根はハァハァと膝に手をついて、下を向いて大きく息をしていた。

その時、関根の眼鏡が落ちた。

ドキン!!!