トラックを一周して1位でゴールしたみゆきと関根は応援団から大げさなエールを送られた。相変わらず周りの生徒はキャーキャー言っている。


「借り物競争。
クラスで一番目立つ女子って書かれてあったんだ。
悪かったな。走らせちゃって。」


関根は指示が書かれた紙を、入っていた茶封筒ごと無造作に畳むとポケットにしまいながらみゆきにそう言った。


「腕が…痛いよ。いきなりじゃん。」

みゆきはドキドキしている胸の高鳴りを隠すように、
そして関根が触った部分を大事そうにさすりながら関根に言った。

「わりー。わりー。」

関根は1頭身近く身長差があるみゆきを見下ろし直して言った。

「坂下の腕引っ張るの、2回目だな。」

ドキン!!


「リレー頑張れよ。
俺もアンカーになっちゃったんだよ。
100メートルリレーだけどな。」
そう言うと関根はクラスの陣地に戻っていき、みんなから冷やかされた。

「なに?いきなり~。超びっくりしたよ~。」
利佳子が後ろからみゆきに抱きついてきた。

みゆきも笑って
「アハハー。なんか借り物競争だったみたい。」

「え?好きな人とか?あいつみゆきのこと好きなの?」
利佳子がキャーと言う。

「違う違う。目立つ女子って♪」

「なんだ~。なんかドラマっぽかったのに~。」

利佳子と笑いながらみゆきは元居た場所へ戻る。
遠藤達がパンパンと拍手をして迎える。

みゆきはずっと関根につかまれた腕をさすっていた。

『この腕だけは誰にも触らせない!!』