私は黒瀬君に背を向けて歩き出そうとした

ガシッと私の腕を掴む

「え?」

「待てよ?」

「腕、離して?もう無理なの、不安になるのもこんな醜い表情も黒瀬くんに見せたくないの!!」

私は溜まっていた言葉を吐き出すように言った

そんな私を

「行くなよ、美優・・・」

まるで壊れ物を包むように抱き締めた

そして、囁いた、私の名前を・・・

「は、離して?黒瀬くん・・・」

口ではそう言っても抵抗しない私

抵抗なんて出来る訳無かった、大好きな人だから

「ごめん、ごめんな美優」

何に対する『ごめん』なの

女の人と一緒に居た事?

不安にさせたこと?

「もう、不安にさせない、から」

「・・・」

黒瀬くんは言う

「自分勝手でごめん、泣かせてごめん、辛い思いにさせてごめん、不安にさせてごめんな・・・」

「黒瀬・・・くん?」

ふと、顔をあげる

すると、其処には涙を一粒零している

黒瀬くんが、居たんだ

「かっこ悪りぃよな俺・・・他の男とは普通に喋ってるのにさ俺とは喋ってくれねぇし・・・」

それって?

「最初は電話で声が聞けると思って別にいいと思ってた、けど我慢できなくてっ・・・」

きゅっと唇を噛み締めた黒瀬くん

そして・・・

「・・・美優を傷つけた」

そうやって悲しそうに笑った
 
「黒瀬くん・・・」

それって、妬きもちだよ、ね?

そっか一緒なんだ・・・

「よかった・・・」

安堵の言葉が漏れた