「アンタ・・・。」
「なんだ?」

涙目になってると悠が視線をずらしながら
真っ赤な顔で話しかけてきた。


「・・・す、住むトコ・・・
 ないの?」
「?あぁ。」
「・・・私の家・・・住んでもいい・・・。」
「は?」
「・・・ッ・・・
 私の家ッ!住んでもいいッ!」
「はァ?」
「な、なにっ!?やなの!?」

真っ赤になった悠を見て、
俺は無意識に手を伸ばし、奴の制服の
リボンを引っ張り、顔を近付かせていた。
「な、なにすん・・・。」

真っ赤になってアタフタする悠。

なんだ、コイツ。

なんで、

なんで、

_______抱きしめたくなるんだ?

そんな俺の気持ちを無視して口は勝手に喋りだす。



「元々御前に拒否権はなかったんだよ。」


“元々御前に拒否権はなかったんだよ。”

なっ、ななな何を言ってるんだコイツっ

ちちちちちょっと、なんか・・・

なんか、ドキッとしたじゃんかァァ!!!!!!


顔が真っ赤になってる私を見て
男はニヤッと妖しく笑った。

「ふ、ふざけるなバカ!」
「ユキ。」
「へ?」
「俺の名前。バカだと濁点ついて呼びにくいだろバカ。」
「バ「ユキ。」

男・・・ユキの目は
『次バカって言ったらどんなことになるかわかってんだろうな』
と、語ってる。

どんなことになるかわかってるんだろうな?
ふん、知るか。
嫌なら敢えてついてやる!

「バ「ユキ」カ「ユキ」ア「ユキ」ホ「ユキ」。」
「・・・。」
「・・・。」

どうしても言わせない気らしい・・・


「ユ・・・。」
「ユ?何がユ?」

意地悪そうにユキは見てくる。
ちょ・・・そんな顔するなァァ!!!


「ユ・・・浴衣!」
「ちッ・・・。」


緊急回避。だってムカつくじゃん。

「まぁとにかくこれから宜しくな・・・悠。」
「んひゃぁッ?」
「・・・。」
「・・・。」

ヤバイ、緊張して変な声出た。
するとユキがいかにも困ったような顔をした
そして、


「おい、悠。誘ってんのか?俺、
 一気にやるタイプだからしらねぇぞ?」


そして、セクハラをしてきた。

「バ、バカッ!セクハラッ!変態ッ!
 ドSッ!悪魔ッ!変態ッ!」

「変態を二回言ってるぞ。」

「うるさい!」

こんなので私は高校生活できるのだろうか・・・

「じゃ、また明日ー。」
「わかった。バイバ・・・また明日ー。」

私は親友・鳴瑠と別れて家に帰る為
交差点を曲がる。

目の前にはユキと出会った
樹齢300年の大きな木。

この木のおかげで私はユキと会えたのかな・・・

「て、何考えてんだ私。」

自分に苦笑いし、家の鍵を鞄から取り出す。
えっと、後で夕飯の買出し行かないとな・・・
それに昨日ユキが料理を手伝おうとして、
包丁折っちゃったんだっけ。

てか包丁とかどうやって折れるんだ・・・

私は苦笑いをし、鍵を開ける。

えっと、たまねぎ、にんじん、じゃがいも、
トイレットペーパー、クレンザー、包丁・・・
「すみません」

私は考えることに忙しくて、声をかけられたのに
全然気付かなかった。

たまねぎ、にんじん、じゃがいも、
トイレットペーパー、クレンザー

「包丁・・・。」

私は気付くと声に出してしまっていた。

「えぇっ!?」

私の後ろにいた男の人(仮定)が後ずさった。

「え?」


ここで、その人の第一印象を
伝えておこう。
その人は、
顔:超美形
だった。


さらさらな茶髪で、
ちょびっと垂れ目で優しそうな目。
そして、
ユキと似ているカジュアルな服装
そして、


超絶イケメン
男の人(肯定)は苦笑いしている。

「あの・・・なにか、用ですか?」
「あぁ、あの、此処らへんでこの男を
 見ませんでしたか?」
「?」

男の人(肯定)は手に持っていた写真を私に
見せてくれる。

「!!!」
その写真にはユキが写っていた。
そして目の前の男の人も。

ユキは面倒くさそうにそっぽを向いて、
男の人は100人が100人惚れそうな笑顔で
写ってる。

「あ、あの・・・この人が
 どうかしたんですか?」
「んー?いや、別に何もして無いんだけど
 ちょぉっと探してるんだよね。」

怪しい。いや本当に妖しい・・・
じゃなく怪しい。

「あ、あのっ!
 急いでるんで失礼しますッ!」

「はぁ・・・・。」
私は靴を脱ぎ捨ててユキのいる
私の部屋へ向かうべく、
階段をいつもより早く駆け上がる。
「ねぇねぇ、ユキー!さっき変な人が・・・。」

ガチャ

私の部屋の扉を開ける音。

「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
絡めあう三人の視線。

三人。

三人?

「あ、こんちはー。」
さっきのイケメン、何故此処に?
「いや、あのね?」
「寄らないで触らないで見ないで。」
「だから俺は・・・。」
「待ってください。警察を呼びますんで。」
「ユキのね・・・。」
「警察は119番だっけ・・・。」

「だーかーらっ!
 俺はユキの友達で!
 ユキと同じ理由で人間界に来たのっ!
 あと警察は110番!」

「・・・。」

「なにその、イタい人を見る目。」

「本当ですかぁ・・・?」

「本当だって。」

そう言い、男は目を細める
すると、大きくて真っ白な、ユキのような
羽が出てきた。

「・・・。」
「あれ?何その反応。驚かないの?」

だってユキのときに
もう見たしなぁ・・・
「で?貴方名前は?」

「おい悠。なんで俺の時より
 丁寧なんだ?言い方が。」

「五月蠅い悪魔。」

「あ、悪魔ッ!
 ぶくくくくっ・・・。あぎゃっ!」

ユキが不機嫌そうに男の頭をはたく。
なんなんだろうこの二人・・・。
兄弟・・・とかかなぁ?


「あ、俺ら別に兄弟ってわけじゃないよー。
 ただの友達ー。」

格好良くウインクをしながら答える男。
なんで考えてる事が分かったんだろう・・・?

「えっとねー、
 俺の名前はアキ。
 ユキと同じ天使。」

「アキ?」

「うん。アキ。」

「分かった。」

「じゃ、これからよろしくー。」

「分かっ・・・えぇっ!?」