それなのに−−−…。


「えっ、引越し!?」


「そう」


「だ…誰の??」


「俺の」


「何でっ!?何で引越し?
私を置いてどこ行くんですかっ!?」


−−−…それは春休みに入って3日が過ぎたある日のこと。


卒業式の日に教えてもらったナツメくんの携帯にドキドキしながら、何度もシュミレーションをしてかけたというのに…。


通話時間が2分も経たない内に絶叫する私がいた。


深呼吸して、少し震える手で発信ボタンを押して。


数回の呼出し音の後に聞こえてきたナツメくんの甘く低い声にうっとりしながら…


「今いいですか??
あ、何してました?」


恋人っぽい会話に足をバタバタしながら聞くと。


返ってきた言葉は…


「今引越しの準備で忙しい」

…だった。