「あたし、今日微熱あるの!」

「微熱?」

「陸久のせい!」


は!?

俺のせいじゃねぇだろ…。


「俺、うつっても知らねぇって言ったじゃん」

「そ、そうだけど…」


千春はそう言うと、俯いてしまった。





…ふーん。

ホントは言いたいけど、ここ教室だから言えねぇってこと?


「たくさんキスしたこと、怒ってんだ?」

「なっ…!」


俺の言葉に、クラスのみんなが俺たちを見る。


「もう知らないっ!」


千春は顔を赤くして、教室を出ていった。





拓也はニヤニヤしながら、俺を見ていた。


「千春ちゃん、怒らせちゃったな」

「…だな」

「でも、付き合えてよかったな♪俺に感謝しろよ?」


拓也が千春にいろいろ話してくれて、俺の知らないところで協力してくれてたことを知った…。

まぁ、感謝だな?



それより、あとで千春に謝んなきゃな。





「千春」

「……」

「千春?」

「……」


陸久、あたし今怒ってるんだからね!

陸久が教室で『たくさんキスしたこと、怒ってんだ?』なんて言うから!

陸久のクラスのみんなに聞かれたし、見られたし…。





あたし、恥ずかしかったんだから。

それに…。


「千春、待てって」


陸久があたしの腕を掴んで、陸久の方に向けさせられる。


「あんなこと言ってごめん…」

「……」


そういうふうにやさしく言われると、許しちゃうじゃん…。





「恥ずかしかった…」

「…ごめん」

「それに、陸久はモテるから…あんなこと言ったら女の子たちが放っておかないんだよ?」


陸久、分かってる…?


「んなの関係ねぇよ」

「え?」


関係ない…?





「俺には千春しか見えてねぇから。千春の以外の女はどうだっていい…」


陸久…。

あたしも、陸久しか見えてないの。

陸久が、ホントに大好きなの。


「陸久、好き…」

「何だよ、急に。熱でおかしくなったか?」


違うもん…。





言いたくなっただけ。

伝えたくなったの。


「おかしくなんかなってないもん…」

「急に言われると、何か照れるからやめろ」


陸久、照れてるの…?

あたし、陸久のそういうところも好きだよ。

また言ったら、もっと照れちゃうかな?





意地悪はしないでおこ…。


「ほら、手繋げ」

「…うん」


陸久は手を差し出してくれて、あたしは陸久の手に自分の手を重ねた。

手を繋いだまま、陸久はあたしの家まで送ってくれる…。



言葉にしなきゃ分かんないことも多いけど…。