あんな母親には頼らない…絶対に。
あたしはそれだけ書いて、カバンの中に紙を入れてベッドに寝転んだ。
そういえば、保健室で会ったあの人誰だったんだろ…。
今気づいたけど、あたしの名前教えたのにあの人は名前教えてくれなかった。
まぁ、知りたい訳でもないんだけど。
…女の人に慣れてる感じで。
何となくあぁいう人、苦手。
結局外見ばっかりで、内面なんて見てくれないって言うし。
…まぁ、恋愛とかどうでもいいんだけど。
男の人を好きになったことないし。
好きになろうとも思わない…。
だけど、こんなあたしでもいつかは誰かを好きになったりするのかな…。
考えたこともなかったけど。
…今は別に、愛を知らなくてもいいや。
──あたしには、関係ないことだと思ってた。
誰かを好きになることも、誰かに愛されることも…。
だから、まだ知るはずもなかったんだ。
…あなたに恋をすること。
「千春ちゃん、仕事して!」
「はーい…」
あたしは、バイト先のカラオケにいた。
バイト先の先輩で、2コ上の優子(ユウコ)さんは、あたしが唯一話す仲のいい人。
かわいくて、頼りになって…。
何より、あたしにやさしくしてくれる。
ホントにいい人なんだ。
「千春ちゃん、今日は一段と元気ないね?」
「バレた?」
「バレバレ」
優子さんには何も隠せない…。
すぐ分かっちゃうから、優子さんだけには何でも話しちゃうんだ。
受付をしてるあたしと優子さん。
今、お客さんいないし…。
相談しても大丈夫かな?
「優子さん…」
「ん?」
「優子さんは、何で大学行こうって決めたの?」
あたしが今悩んでる進路。
優子さんがよく話してくれる大学の話。
話を聞いてると、大学楽しいみたいだし…。
だから、聞いてみたかった。
やりたいこととかあるのかなって。
「うーん…何でだろ?」
「え…」
優子さんから返ってきたのは、意外な答えだった。
「とりあえず大学!みたいな感じで決めちゃった。千春ちゃん、進路悩んでるの?」
「うん…」
別にやりたいことがある訳じゃない。
優子さんと同じでとりあえず、って感じだし。
それでホントにいいのかなって…。
「まだ時間あるし、ゆっくり考えてみな?」
「…うん」
優子さんとそんな話をしていたら、お客さんが来た。
「えっ…」
6人くらいで来たお客さん。
その中に、今日保健室で会った男の人がいた…。
男3人、女3人で来てるってことは合コン?
「千春ちゃん、空いてる部屋ある?」
「あ、うん…」
優子さんに言われて、部屋を探す。
平日の夕方は学校終わりの高校生がたくさん来るからな…。
「あ、402空いてます!」
「了解♪」