その頃、赤いピンヒールを
履いた茉優は、呼び止める声
触れる手を、振り解き歩く。

「マヒロ、待って
 話を聞いてくれ
 
 マヒロ、俺達、やり直そう
 彼女とは別れるから・・・」

立ち止まる、茉優。

「もう、いい加減にしてよ
 別れられないくせに・・・
 
 貴方が、幼馴染の婚約者
 を捨てられるわけない・・・
 
 こんなところにまで来るの
 やめて、帰って」

モデル事務所の傍・・・

事務所の表の看板に
飾られた藍の例の広告。

『この春
 痺れる口づけ
 体感してみる?』