壁を叩く音が、
正面の壁以外からしてくる。

ドンドン!

バンバン!

せめて何かのリズムを取ってくれれば、
少しは怖くなくなりそうなのに。
例えばサンバとか。



……また、乗り越えるか。

幸いな事に、1つだけ無事な壁がある。


「よっ、と……」


ニヤリ。

そんな擬音が似合うような顔が、
乗り上げた壁の向こうに待ち構えていた。


でも、子供だ。

手を伸ばしただけじゃ、届かないだろう。


僕は急いで、
さらに隣の壁の上に足を伸ばす。

どうか落ちませんようにと、祈りながら。