俺は、ヤクザなら誰でも嫌いだ。
みんながみんな、そうじゃないって分かってる。
けど、俺はヤクザがみんな同じに見える。
「…っや!…つや!竜也!」
「あ?」
「お前さっきから、何ボーっとしてんだよ?」
「あっわりぃー。ちょっと思い出したことがあってな…」
「らしくねーな。ってか夏休みどうする?海でいいよな?」
「俺は、どこでもいい」
「じゃぁ海にするか!優希ちゃんも『海が良い』って言ってたし」
そう言って広樹はケータイでメールを打ちはじめた。
たぶん、井上にだろうな。
この時はまだ、海に遊びに行くのが俺と優希の運命を変えようとは思っていなかった。