―― 城内
「姫、お食事の時間です」
「……」
噂の姫は、城に存在した。
色白で小顔。はっきりとした目元と真っ赤な小さめの口。その黒髪は傷みというものを知らず、綺麗に伸びていた。
父親は彼女を絶世の美女だと称賛し、この顔を持ってすればどんなところにも嫁がせることが出来ると思っていた。
機が熟せば、彼女を自分の名を売るために嫁がせようと考えているのだ。
彼女の母親は彼女を生むと体を弱くし、お世継ぎを生めない体になってしまった。
そんな女はここには無用だ。すぐに奥をおろされ、物心のついた姫と顔を合わせたことはない。
姫は悪い虫がつかないよう、父親と乳母にしか会うことを許されず
真の箱入り娘として18年間も育てられた。