人混みの流れの中で、二人は立ち止まった。

美枝子は腕を組み、首を傾げ考え込んでから、

「あそこのリンゴ飴がいいわ!」

 そう言って、五メートル程先の露店を指差した。

「もっと、高い物でも構わないんだぞ!」

 そんなシローの言葉に耳も貸さず、美枝子はリンゴ飴の露店の行列に並び始めた。

シローも追いつき二人で行列に並んでいると、誰も後ろには並ばなくなってしまっていた……。


 店の中ではおばあちゃんが忙しそうに、リンゴ飴の頭の部分に、セロハン紙を輪ゴムで留めているところだった。

「すいません!二本ください」

 シローが声をかけると、

「はい、二本ね!」

 今まで忙しそうにしていたおばあちゃんが、顔を上げてシローを一瞥した後、

「二本で四百円」

 ぶっきらぼうにリンゴ飴を手渡した。

お金を店のカウンターに置き、シローは直ぐにセロハン紙を剥がして口に入れた。

仄かに甘みが広がり、シローは懐かしさを感じていた。

あの頃見たような秋晴れの日差しが、十二支社通りに降り注いでいた。