リヤカーのハンドルを下ろし、シローはその場に立ちすくんだ。

Yの字に別れる道の処には大きな柿の木があり、太い幹のたもとには歪な形をしたラグビーボール程の石が置いてある。

北風が砂埃を舞い上げていった……。

どれくらい、その場所に佇んでいただろうか……。

最後の空欄を埋め尽くす事が出来ず、迷いが迷っている事さえも迷わせていた。

右足の古傷が少し痛んだ……。

風が治まると同時に、胸の内の不安が徐々に退いていった。

シローは夕日を背にしてリヤカーを引き始めた。

真っ直ぐ歩き出そうとしていた。



東和町に向かって……。