「……君には心がなかった。」




健一は一言、そう言うと、腕を組んでうつむいた。






「……心。」




「そう…喜怒哀楽…それらを君は…一切現さなかった…不気味なほどにね。」



「―っ……」





不気味、という言葉が冬彦の胸に重くのし掛かった。





すると、それに気づいた健一は慌てて取り繕った。





「…いや…今の君は全く違うよ!ただ…最初は…ね…」




「いえ…いいんです…裏でなんて呼ばれていたかなんて知ってますから…」





奇怪な子…





冬彦はその言葉と自らの身体を重ねて、自嘲気味に笑った。







「でも…僕は君が完全に心を失ったとは思えなかった。…君は、冬彦君を基盤にして作られていたんだからね…」