「違うよっ!」




冬彦は、夏美の声をかき消すほど、大きな声を出した。




「えっ?」



夏美は、体を強ばらせて冬彦を見た。





「確かに、病気のことも考えた…」


「やっぱり、なら…」



「でもっ!それで鍬原さんのことを、可哀想だと思ったことは一度もない。……僕は、昨日、鍬原さんが、いなくなっちゃうことを考えたんだ。」


「え…?」



「……すっごく悲しかった。すっごく切なくなった。すっごく……悔しくなった。」



「高椿君…」


「それは、鍬原さんの病気のこととは関係なくて、僕は、僕は…」



「うん。うん。」




病気と関係ない。




その言葉を聞いた瞬間に、夏美の胸から冬彦への不信感は拭い去られていた。





「僕は、鍬原さんに一緒にいて欲しいんだっ!」







冬彦の叫びが教室に響き、それと同時に夏美の目から、一滴の涙がこぼれ落ちた。