「鍬原さん、ちょっといい?」



冬彦は、友人と話している夏美に話し掛けた。



夏美の友人は好奇の目で冬彦を見ていた。


「な、何?」




夏美は、目を丸くして訊いた。







「放課後、話があるから、帰らないでね。それだけ、それじゃ…」






冬彦は、早口で夏美にそう言うと、すぐにUターンして透のいる場所へ戻った。





冬彦の背中では、夏美の友人が黄色い声を上げ、夏美をからかっていた。







「やるね~色男。」




席に戻ると、透がニヤニヤしながら言った。





「……ノート、貸さないよ。」





冬彦は、にっこり笑って透に言った。







「ごめんなさい。お願いですから貸してください。」




透は、一瞬で額を机にこすりつけながら言った。