「ご、ごめん。聞いてなかった。」


冬彦は片手で透の顔を押し退けて答えた。



「おい~、頼むぜ~次の数学な、宿題が出てたろ?」



「うん、そうだったかな?」



冬彦は、教科書をすべて終わらせてしまっているので、宿題に追われたことはなかった。



そのため、あまり覚えていなかった。



「出てたんだよ。しかも十ページ!」


「……それは、たいへんだね。」


透の口調とは対照的に、冬彦はまるで他人事のように話した。



「当然、やってない!」




透は胸を張って言った。




「なので、ノート貸し…」
「却下。」





冬彦は透の言葉を遮って、席から立ち上がり夏美の方へ向かった。





「ケチぃ~こっちは運命かかってんだぞ~」


と透が文句を言った。


だが、冬彦は気にしてなどいられなかった。







宿題よりも重大で、運命のかかったイベントが、彼を待ち構えていたからだ。