海の家から、徒歩30分の距離。 3階建て木造アパートの1階の角部屋。 古く、色褪せた表札の名前は、すっかり剥がれかけている。 カギを差し、重苦しい、玄関のドアを開ける。 「……ただいま。お姉ちゃん、居ないの?」 返事がないことを確認して、靴を脱いで、リビングを突き抜けて、奥の部屋に入る。 家具は、パイプベッドと、小さな机1つだけが置かれた、殺風景な和室。 ここがあたしの部屋。