海の家に着いて、夕食の準備をした。
キッチンに立ち、料理をする姿を関心した様子で眺める海が、なんだか可笑しくて、笑いが出た。
料理を作り、皿に盛り付け、テーブルに並べる。
「人に、料理してもらうのなんか、いつぶりだろうな」
独り言のように呟く、海の台詞は聞き逃すことはできなかった。
別れる前は、歩美さんに。
そんな当たり前のことを想像して、わざわざ落ち込む自分に、嫌気が差した。
こんなこと、百も承知なはずなのに。
好きになったのは、あたしの方なのだから。
結局海は、あたしの作った料理をおいしい、と言っておかわりまでしてくれた。
「明日の朝も、あたしが作るからね」
照れ隠しに、少し素っ気なかったこと、気付いてくれればいいのに。