名前と、年しか知らない、いや、それさえも本当かどうかわからない。

どこの誰かもわからない、

そんな相手に手を出すなんて。

だけど、目の前にいるのは、極上の美女。

俺はこう見えても、22年間、普通で平凡に生きてきたクチで、

そりゃ、いくら普通で平凡でも、恋の1つや2つはするわけで。


すると彼女は、俺の考えを読み取ったのか、大きな目を細めた。

「人は口じゃ、いくらでも嘘を吐ける。だけど身体は、いつだって正直だと思うの」

そう呟いて、くるりと、俺に背を向けて、ベッドに向かって歩き出した。


その後ろ姿は、やっぱりどこか悩ましげで、儚げだった。


気付けば俺は、彼女を後ろから抱き締めていた。

そして、折れそうなほどに細い体にびっくりすると同時に、俺の中に、新しい感情がふつふつと沸き上がってきた。

そのまま、抱き抱え、壊れ物を扱うように、優しくベッドに寝かせた。


「嫌だって言うなら、今のうちだよ」


できるだけ、紳士に言ったつもりだ。

だけど彼女は俺の言葉に少し面食らったようで、だけどその表情は少し嬉しそうでも、悲しそうでもあった。