「……とりあえず、今日は帰ってもらっていいかな?俺は、伶良の主治医だ。彼女の意見を尊重するよ」


机の上に置かれた資料のようなものを拾い上げて、伶良に君が来たことを伝えておくから、と付け足しながら、巧さんは、颯爽と部屋から出ていった。



「……ごめんね。兄貴、生真面目だから」

何に対してのごめんなのか、これまでのやりとりをずっと黙って見ていた和泉が、そう言って俺に部屋から出るように促した。



部屋を出て、そのままエレベーターに乗り込んだ。

和泉の、ごめんね、から二人とも一言も話さないまま、病院の入口まで着いた。



「少し、時間ないかな?」

沈黙を破ったのは、俺だった。


「…………レイのことを知りたい」

突然の俺の台詞に、不思議そうな顔を浮かべていた和泉の顔が、なるほど、といった顔に変わる。