「……まさか、名前も知らないのか?」

巧さんが言っていることは、もっともなことだ。



俺は、レイのことを何もしらない。

それは、自分がいちばんよくわかっていることだ。




だけど、それでも。

名前も、たとえば年齢でさえも。
そんなことは、関係ない。

俺は、レイと名乗る、正体不明の謎の女と出会って、惹かれていったのだ。

それは、彼女の罠だったのかもしれない。

そうすると俺は、そんな彼女の罠に、まんまと引っかかった、愚かな男なのかもしれない。

だけども。たとえそうでも。

そうだとしても、構わない。