「そんな…風呂入ってくる、みたいなテンションでそんなこと言うなよ」
「だって、変でしょ?いい年した、男の人がその気もなく、女を家にあげたりしない」
ばっさりと言い切る彼女は、清々しいほどだった。
そしていつの間に、ソファーから立ち上がり、てくてくと歩き出した。
「それともお兄さん、真面目くんなんだ?彼女がいるから一線は越えないの?」
机の上のコルクボードを指差し、薄い唇を持ち上げた。
「彼女じゃないよ。別れてるんだ、とっくの昔に。処分し忘れてるだけで」
5歳も年下の女の子に、何を言い訳みたいなことを言っているのだろうか。
理由は、自分でもよくわからなかった。
「抱いたら、いいよ。なんならあたしをその彼女だと思えばいい」
「そんなこと…」
「できなくないよ。だってお兄さん、まだ、あたしのこと何も知らない」
そうだ。
その何も知らないのが問題なんだ。