和泉に兄貴、と呼ばれてこっちを向いたのは、こともあろうに、外見だけでいえば和泉にそっくりな男だった。
「実の兄の南波 巧(ナンバ タクミ)。ここの医師だよ」
和泉に軽く紹介され、いまだ寝転んだままの白衣の男の人に会釈をする。
「……和泉の、友達かい?」
兄貴と呼ばれる人がはじめて開いた口から出てきたのは、そんな言葉。
なるほど、そっくりだと思った外見だが、よく見ると和泉よりも穏やかそうな顔をしている気がする。
「……レイが、愛している人だよ」
和泉の紹介にびっくりしたのは、俺の方だった。
まさか、和泉にそういう風に紹介されるなんて思ってもみなかったからだ。
心のどこかに、愛している、なんて、あの置き手紙上のレイの得意の嘘なんじゃないかと、思っている自分がいた。