どうやら、最初の質問がはぐらかされているような気がして、苛立つ。

だから、一切の感情は込めないで、ただ、たんたんと尋ねる。

「あたしが死ぬのは、いつ?巧はそれを知ってるんでしょ」


お姉ちゃんからの視線を感じたけど、気付かないふりをして、巧に問いかける。


「もう、いいよ。人間は、みんな嘘を吐いて生きてる。みんながあたしに嘘を吐くの。あなたの病気は治る、って。もう、いいの。この嘘には飽きたの。ねぇ巧、あなたがあたしを大事に思ってくれてるなら、あたしに本当のことを言ってよ。巧だけは、あたしに嘘を吐かないでよ」


口を開くと、溢れ出す言葉が止まらなかった。


気付くと、お姉ちゃんがあたしの肩を抱いて、震えていた。


一瞬、時間が止まったかのように静かになった診察室。

「……わかった」

そう、巧がぽつりと呟いて、時間はまた、動き出したように感じた。